諸々の諸事情により

日常を豊かにするちょっとしたこと。

火花(ドラマ)

etflix配信の「火花」。

NHKで10週に渡って放送されていたので、見ました。

ちなみに、本の方は、電子書籍で買ってありますが、未読です。映像が思ったより面白かったので、本の方も読んでみようと思っているところですが、自分なりの感想を、もういろんな人が散々書いているかもしれませんが、書いてみることにしました。

青春物語である

これは各方面でそう言われているので、そうなんだと思います。生き馬の目を抜く芸人の社会でのし上がろうと懸命に生きる主人公徳永と、主人公が師匠と定める神谷を中心とした物語です。

おそらく年の頃では徳永が20代中盤から後半、神谷が4から5歳程度年上くらいの設定なのかと思います。

青春にしては遅いですね。

どうやら、世間一般でいうところの青春の定義が変わっているのでしょうか?

社会が成熟していくにつれ、人間的に成熟する時間にも余裕がでてきている、という解釈をするならば、青春は、学生時代だけの特権ではなく、社会にでてから、自分が何者か認識するまでの永いトンネルのことを指すのかもしれません。

ともかく、物語はまだ主人公たちが何者でもないところから始まります。

師弟関係の物語である 

 主人公徳永は、先輩芸人の神谷を師匠と定め、自分の中にない答えを彼の中に見出そうと、必死に神谷との時間を過ごします。

これはもう最初から運命としかいいようがないような、突発的な師弟関係の始まり方をしています。

案外、人間社会ってそういうものなのかもしれません。

私も、人生で何人か、お手本になる人を定めていますが、自分の意思でそういった人と出会ったかといわれると、どうもそうでない気がしています。ある程度の準備が自分の中にあったからこそ、そういう人と出会えたのかもしれませんが、人との縁というのは、得てしてそういうものかもしれません。

何はともあれ、なぜ神谷が師匠であらなければならなかったのか、少なくとも映像ではそこまで説明が加えられないまま物語は進みます。

 推理小説であれば、物分かりの良い饒舌な語り部がでてくるところではありますが、これは日本的な純文学。「文脈」あるいは「コンテクスト」という空気の中で視聴者の感性に問うようなものなのだと理解しました。

私小説である

もはや小説は死んだ、 というところからどんな物語を紡ぐのか、というのが近代小説の課題であったわけで、それをあえて私小説という形で展開し、さらにベストセラーにまでなったというのは、極めて商業的なある意味での力学が作用したのかと考えているのですが、ここでは映像についての話なので、それはさておき。

物語は、徳永の目線で理解されていくのであり、良くも悪くもその制限の中で芸人の青春を描いていく物語なのです。つまり、これは純粋に経験に基づく、事実かどうかは別として、胸に去来していたものすべての表象に関する叙述なのでしょう。

従って、芸人以外の人間がこれを書いたとしても、それは社会のコンテキストとして、これほどまでの力を持つことはなかったのかと思います。

何の指針にもならない

この物語を見たからと言って、芸人になろうと思う人が出てくるとは思えないし、社会で役立つ知恵がつくとも思えない。そういう意味では、これは純文学であったとしてもエンターテイメントなのかなと思います。

昨今のテレビでは、「情報」が特に重視されているように思うのですが、この映像の中に「情報」を見出そうとする人はあまり多くないのではないでしょうか。あるいは自分の見方がそうなだけなのかもしれませんが。

夢はかなうということへの幻想

 夢って、そもそも持てるってことだけで幸せですよね、たぶん。

「夢っていう言葉はきっとあきらめた人が発明したんだろう」って、竹原ピストルが歌っていましたが、これはこれで破壊力のある言葉であり、なぜか大いに共感しつつも、どうも夢の定義の問題なのか、夢ってなんだ、と小一時間、布団の中で考えたりもするわけです。

でも、多くの人が何がやりたいかわからないとつぶやく時代です。

一途に何かを追い求めるって、それだけで充実しているわけです。後先考えてるひまなんてなくなりますからね。

とはいえ、そんな夢が、単純にかなう、って物語でもないわけです。

うがった見方をすれば、夢をかなえるというのはプロセスであって、結果ではないのではないのかなとも思います。

つまり、仮説検証というプロセスをつぶさに踏んでいくことができるのかどうか。それが、自分の中で将来見ている何か、に向かって前進するための方法論なのではないでしょうか。この映像を見ていて、そんなことを思いました。

総じていうと

ああこれはもっぱら文学だなあ、と思うわけです。

だからなんだと言われればそれまでですが、それがメディアを消費するということなわけです。

日本以外でも配信しているということなのですが、彼らはどんな見方をしているのでしょうか? 全然調べていないのであれですが、ちょっと興味があります。

久しぶりに見たドラマだったわけですが、Netflix、すげえ、あと、NHKもすげえ、って思いました。

 別に教訓めいたことは何もないです。


火花 予告編 - Netflix [HD]

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